2014年後半から下落し、以降低迷が続いている原油価格。その影響で、石油事業を大きな収入源としている湾岸国の各政府は、歳出削減やプロジェクトの延期を余儀なくされており、民間企業も人員を削減したり、一部は倒産に追い込まれたりしている状況が続いている。アラブ首長国連邦(以下UAE)も例外ではない。信用保険大手のコファスによると、15年第3四半期から今年の第1四半期にかけて、請求が徐々に遅れたことで企業が債務返済に間に合わなくなり、237もの数の中小企業がUAEから撤退したという。

その状況は、ドバイ空港の立体駐車場に放置された数十台もの高級車両が物語っている。元はこの地でビジネスを行っていた外国人の経営者や駐在員達が所有していた車だ。ドバイでは、小切手の不渡りや倒産は犯罪とみなされるため、債務返済が不能となった多くの外国籍のビジネスマン達は投獄リスクを避けようと、車を捨てて同国から逃げることを選んだのだ。

コファスの中東代表のマッシモ・ファルチオーニ氏は「こうした国外逃亡は、以前と比べて約3倍にまで増えた」と述べた。同氏は、現時点で弱体化していた企業は既に倒産しているため、(今後の)倒産件数は落ち着いてくるだろうとも予想している。だが、景気が減速する中、学費や家賃といった生活費の高さが多くのホワイトカラー層の生活を非常に苦しいものにしており、家族単位でドバイを去るといった状況は今もなお続いている。

明るい見通しもある。マッシモ氏は上記の他にも、20年にドバイで開催予定の万国博覧会に向けたインフラ投資が加速することで、景気減速は徐々に改善するだろうと述べている。また、世界銀行は2016年7月26日、「原油市場の供給過剰が次第に解消される中、原油価格は2016年後半には幾分押し上げられる見込みだ」と述べた。

現在、国内外の多くの企業がUAE、ドバイを舞台に新しい事業を推進している。それら事業がひとつひとつ花開く際に、ドバイの景気も都度回復・上昇していくことを、期待したい。

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